グルーヴについての個人的な考察は、前回までで一旦終了しました。

今回は、人工的に計算されたグルーヴについて書きます。
グルーヴは、人と人が演奏する時に生じる「ズレ」などもその要素の一つにはなってきますが、それはそれぞれの人が天然で持っているものがたまたま「ズレ」ていて、それがたまたま気持ちよかった、というものが始まりだと思います。もしくは、無意識に気持ちのいい音楽を演奏していたら、機械が刻む正確なリズムとは「ズレ」ていた、という感じでしょうか。

それまで、気持ちいいか気持ち良くないか、だけで語られていたグルーヴについて、どこをどうすれば気持ちよくなるか、と考える人たちが出てきます。
HipHopミュージシャン達です。
彼らは、ジェイムス・ブラウンやマーヴィン・ゲイなどの過去の古いレコードを漁り、それを様々に組み合わせる事で、新しい音楽を作って来ました。
それこそ使える素材を見つける為に、気の遠くなるような枚数のレコードを漁ります。
その中で、気持ちよくする為のリズムの法則が確立されていったのだと思います。
やがて、J Dillaのような素晴らしいビートメーカー達も現れます。
  
※このように、地味だけどずっと聴いてしまう、中毒性の高いグルーヴがディラの特徴です。
 人口的に作られたグルーヴなのに、自然に体が動いてしまいますよね。


また、R&B、Soul系のアーティストであるD'Angeloも、『Voodoo』や『Brown Sugar』のドラムパターンはHipHopビートメーカーの影響を受けていると語っており、またJazzアーティストであるRobert Glasperも、JazzにHipHopビートを取り入れたりと、HipHopから既存ジャンルに新しいグルーヴが逆流するパターンも出て来ています。


D'Angelo - Me And Those Dreamin' Eyes Of Mine


Robert Glasper Experiment - Afro Blue (Feat. Erykah Badu)

LECTURE:D'ANGELO, NEW YORK 2014 (日本語字幕)

HipHopからの影響については、1:13:00あたりから。

この動画の全文書起こしが「bmr」に載っているので、是非読んでみて下さい。すごく興味深いです。
そこから、J DillaやD'angeloにみられる中毒性の高いグルーヴについて語られている部分を引用します。

Q:当時はまだ(ドクター・ドレーの)『The Chronic』や、(ノトーリアス・B.I.G.の)『Ready To Die』の時代だった。ビギーが大ヒットしてたから、リアルなヒップホップっていうのは、サンプリングしてなきゃダメって感じだった。だからザ・ルーツで俺は4年間を費やして、喧嘩腰になってたよ。「とことん細部にまでこだわり、正確なビートを刻んでやる。12時の針みたいに真っ直ぐにな。俺はビートマシンだ」って感じでね。それなのに、彼(ディアンジェロ)が登場し、俺のプログラムを解いてしまったんだ。俺は、プレミアやQティップ(Q-Tio)に「お前はまるでドラムマシンだな」、「お前は正確だな」って言われることを大きな誇りにしていた。俺は彼のためにメトロノームのように叩いていたのに、彼は「そうじゃなくて、もう少しリラックスして」なんて言ったのさ。

N:それについて話してくれ。そのドラミングの哲学はどこから来たんだい? 君は何をしようとしていたんだ……君は僕の友達を混乱させようとしてたのかい?(笑)

D:いいかい、俺は偉大なヒップホップ・プロデューサーを見習おうとしてたんだ。ブレイクを探している時……サンプルを探している時……これは曲のテンポを台無しにせず、サンプルの速度を上げたり下げたりするテクノロジーが出来る前の話だけど……ビートを鳴らしながら、そのビートの上にサンプルを入れる時、ちょっと前に入れないと完璧には揃わない。ビートが始まるちょっと前にプレイすると、4小節が終わる頃には、きちんと揃うんだ。こうすることで、全てが酩酊状態になるのさ。でも俺はただ、プレミアやマーリー・マールといった、自分が大好きなヒップホップ・プロデューサーを真似しているだけなんだ。

Q:異議あり。君はそれを超えてる。そのレベルを超えてるっていう意味じゃないけど……ドラムをプログラムする時って、クオンタイズの機能を選ぶことができるだろ……ミュージシャンじゃない人のために言っておくと、クオンタイズをオンにしていると、テキーラを12杯飲んでプログラムしても、自動的にリズムを調整してくれるんだ。それでも、俺が知ってる人間の中で、クオンタイズ機能を使わなかったのは、ディアンジェロとディラのふたりだけ。そのふたりが俺にクオンタイズを止めさせた。

いいか、当時ブラック・ミュージシャンシップは正確さが命だったこと、理解しといてくれよ。ゴスペルのスキルとか、1時間で何回ドラムを叩けるかっていうのが重要だった。俺は絶頂期で、ようやくバンドで脚光を浴び始めたと思ったら、とことんまで削ぎ落としてほしいっていきなり言われたんだぜ(笑)。『Voodoo』のアルバムを通して、俺はリムショット(※スネアドラムのリム=ふちを叩く奏法)をやってる。“Feel Like Makin’ Love”の1曲ではスネアを叩いてるけど(笑)。俺としては『スターウォーズ』の言葉を使えば、フォースを使えって言われてるようだったよ(笑)。「いいから俺を信じろ。イン・ザ・ポケットをキープしつつ、とことんだらしなく叩け。上手く行くから」って言われてるような感じだった。だから、慣れるまでに1ヶ月かかったよ。


と、こういう風に、僕たちが雲の上の存在のように憧れるブラックミュージシャンも、血統や環境から惰性でグルーヴを出している訳ではなく、ちゃんと研究して進化させていっているんだ、というお話でした!
こういう新しいグルーヴにどんどん影響を受けつつ、自らも進化させていきたいものです!
(その為には古い音楽を漁る事も重要です) 

 
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