バンドの練習などでよく、「もっとモタって」だとか、「そこはレイドバックさせて」などという言葉を耳にする事があると思います。
意味合いとしては、“ジャストのタイミングより遅いタイミングで音を鳴らす”と言う風に使われる事が多いように感じます。
かなり感覚的な使われ方ですので、この事についてはかなり誤解が多いように思います。
【グルーヴ】って何?(4)「タメと瞬発力」で書いた通り、タメた後には瞬発力が必要となってきます。
その感覚を身につける考え方を順を追って説明したいと思います。
裏拍の存在を意識する
これは基本中の基本で、リズムを意識する上では欠かせない感覚です。
手拍子をする時、叩いた後に必ず手を離す動作を行うはずです。
叩く時が表、離す時が裏です。
音を「出す」事に意識すると、この裏の存在を忘れがちです。
しかし、表があれば必ず裏がついてきますので、この存在を常に意識しない事には、何もはじまりません。
出した音の終わりを意識する
次の段階では、音の終わりを意識します。
出した音は必ずどこかで消えます。
これも、音を出したのならば必ず起こる現象です。
その終わりが意識出来るようにしましょう。
そうすることで、例えば手拍子ですら、音の「長さ」を感じられるようになります。
音の終わりと裏を同時に意識すれば、手拍子をした後で手を離したタイミングで音が終わったと「感じた」と思います。
そしてそのタイミングは、自在に操る事が出来るはずです。
音が出るまでの時間、“ねばり”を意識する
これは、手拍子だと少し分かりづらいです。
“指パッチン”にしましょう。
指を引っかけてから、“パッチン”するまでに、時間があると思います。
「ねばり」の時間です。
そこの時間を意識する事がとても重要です。
これも、「音を出す」と思えば思う程、意識されにくくなりますので、意識して感じるようにしましょう。
この場合、「ねばり」と「パッチン」だけのように感じるでしょうが、実はそれだけではありません。
この後に、また指を「引っかける」動作があります。
実はリズムとは、表と裏だけでは片付けられないんです。
指パッチンだけでも、3つの動作の関係によってリズムが生み出されるんです。
「ねばり」と「引っかける」部分には、自由な時間を与える事が出来ますよね。
それこそが「モタり」や「レイドバック」の正体なんです!
じっくり「ねばる」ほど、次の動作は素早く!
ここまで意識出来たなら、あとは自由に「モタり」をコントロールしてもらうだけです!
しかし、ここでしっかりと「裏拍の存在を意識する」「出した音の終わりを意識する」「音が出るまでの時間、“ねばり”を意識する」の全てを意識出来ていないと、自然にリズムにのる事が出来ません。
一番多い勘違いは、「レイドバック」=「遅れて音を出す」 だと思ってしまっているパターンです!
ぎゅっと弓を引き絞った後、矢が勢い良く飛んで行きますよね?
そのとき、弦の部分も素早くもとの位置までに戻ります。
ぐっと引き絞れば引き絞るほどです。
この緊張と緩和をイメージしてみて下さい。
弓を引き絞る時間が「レイドバック」です。
その後、溜めたエネルギーは一瞬で発散されます。
間違った認識の場合、溜めたエネルギーの“発散”の部分が抜けている場合が非常に多いです。
弓をぐっと引き絞って、その後矢を放たずにゆっくり元の位置に戻してしまうのはNG。
緊張と緩和のない単調な繰り返しで「レイドバック」 させていると勘違いしてしまう、という間違いが多いのです。
自分の楽器で実践してみよう!
このイメージが出来たなら、あとは自分の楽器に置き換えて実践あるのみです!
楽器によって、またはそれぞれの体によって、「緊張」と「緩和」の仕方も違うと思います。
してくれぐれも忘れて欲しくないのが、【グルーヴ】って何?(6)「ずらし」 で書いたように、自分のイメージが体を通して楽器に伝わり、結果として音が鳴る、という流れです。
「モタり」を意識するあまり、楽器の演奏に集中しすぎないように気をつけましょう!