久々に、グルーヴについての新たな考察を記事にします。
音楽をグルーヴさせるという事は、リスナーの感性に訴えかける演奏をする上で非常に重要な要素となってきます。
しかしグルーヴは、その定義の曖昧さから人によって様々な見解があったり、主観的であり感覚的であるため、習得していない人へうまく伝える事が出来ないのが現状です。
(※当ブログでの考察するグルーヴとは、ブラックミュージックを中心とするグルーヴ感です。ジャズのスウィング感であったり、ロックのドライヴ感などの事までは言及しません。もちろん、関連性は少なからずあるとは思います。)
まず、今までの軽いおさらいから。
「グルーヴさせる」ための基礎として、「体内メトロノーム」の構築が不可欠です。
「体内メトロノーム」の意味がわからない方は先にこちらの記事をどうぞ→【グルーヴ考察】その3「体内メトロノーム」
そして、「体内メトロノーム」が身についた上で、「タメと瞬発力」「On The One」「リズムずらし」などのテクニックやリズムコントロールによって、様々なグルーヴ感を生み出す事が可能となります。
単語の意味がわからない方は先に以下の記事を読んで下さい。
【グルーヴ考察】その5「On The ONE」
そしてここからが本題です。
リズムをコントロールする際、異なる2種類のリズム感覚を同時に感じる事が出来るかどうか、これ音楽をグルーヴさせる上で、実は非常に重要なのです。
その二つのリズムを、その性質から「コア(核)リズム」と「エンド(末端)リズム」と名付けます。
「コアリズム」はグルーヴの根幹を担い、「エンドリズム」は細かいリズムコントロールを担う
「体内メトロノーム」を構築出来たミュージシャンならば、体内で一定のリズムが「脈打つ」感覚が分かると思います。
体の中心でゴムボールがバウンドし続けているような、そんな感覚です。
これはテンポキープやグルーヴをキープする際に非常に重要な感覚で、この感覚を見失った時に体内メトロノームが途切れ、結果的にグルーヴも損なわれてしまいます。
絶えず体の中心で一定のリズムが刻まれている感覚がなければ、演奏をグルーヴさせる事は出来ません。
一定のグルーヴを持続させる為に不可欠な、体幹で感じるリズム感覚、それが「コアリズム」です。
逆に、細かいリズムのズレだったり、複雑なリズムのフレーズだったり、演奏する上ではそういった「表面」の部分をコントロールする必要もあります。「表面」という表現だと、本質から遠くてあまり重要ではない要素かと思うかもしれませんが、実はこの「表面」のコントロールも、演奏をグルーヴさせる上で非常に重要なのです。
実際にご自分の楽器で細かいリズムを演奏する際に、体のどの部分に集中するか考えてみてください。
一番正確にリズムコントロールできるのは指先だったり、唇だったり舌だったりすると思います。足を使う楽器なら足先や踵でしょうか。すべて体の端の方に位置しています。楽器からは一番近い位置にありますね。
2つの異なるリズム感覚を同時に感じなくてはならない
「コアリズム」は体幹で、「エンドリズム」は体の末端で感じるリズム感覚です。
「コアリズム」はリズムキープ、「エンドリズム」は細かい表現を担当しています。
よくグルーヴの解説などで、「2拍目のスネアの位置をずらす(モタらせる)事でグルーヴする」などと言われる事がありますが、これは半分正解、半分間違いです。
2拍目をモタらせるという行為は「エンドリズム」でのコントロールあり、楽器に触れている体の末端部分を起点としたリズム表現です。これだけでは、実はグルーヴしません。「グルーヴしているあの音源と同じタイミングで演奏しているのはずなのに、なぜかピンとこない」と思っている人は、実は「エンドリズム」のみでグルーヴさせようとしている可能性があります。「エンドリズム」のみだと、リズムは非常に正確になる可能性がありますが、グルーヴはしません。実は演奏の上手い人の中にも、結構こういう人は多いです。
体幹による「コアリズム」と体の末端による「エンドリズム」、2つの異なるリズム感覚を並行して同時に感じて演奏する事が、演奏をグルーヴさせる上で非常に重要となってきます。
もちろん、今グルーヴ感のある演奏をしている人は無意識にこれが出来ているでしょうし、グルーヴしていない人はこの感覚が身についていないと思われます。
「コアリズム」と「エンドリズム」は、シームレスに繋がっている
ここで注意してもらいたい事があります。
例えば、体の末端で細かいリズムコントロールや表現をしている時でも、実はその末端の動きに合わせて体全体が受動的に動いています。もちろんその延長線上に体幹もあるわけで、末端の動きと体幹とは、全くの無関係ではないのです。
同じように体の中心で一定のリズムを脈打たせている時も、体全体はそれに合わせて自然に動いているはずです。
しかし、繋がっているとはいえ、体の各部位に間違った役割をさせてしまうと、グルーヴはしなくなります。
「コアリズム」で細かい表現をしようとすると、リズムがよれてしまって肝心のグルーヴ感までぐちゃぐちゃになってしまいます。
「エンドリズム」でテンポやグルーヴそのものをキープしようとしたりしても、音楽に脈動がなくなってしまい、無味乾燥のリズムとなってしまいます。(※非常に細かで正確な演奏を要求されるクラシックなどは、これでも良いのかもしれませんが、それではここでいうグルーヴは表現できません)
また、2つの異なるリズム感覚はシームレスで繋がっている為、単純なリズムになればなるほど「エンドリズム」の起点を体幹の側へ近づける事も可能です。ただし、「コアリズム」の中心を末端へ分散させる、または末端の一部へ移動させる事は、グルーヴをさせるという観点からは避けるべきです。「体内メトロノーム」と「コアリズム」はグルーヴの根幹ですので、ブレないようにするべきです。
長くなりましたが、「コアリズム」と「エンドリズム」については以上です。
【過去記事】
【グルーヴ考察】その5「On The ONE」
【グルーヴ考察】その7「コアリズムとエンドリズム〜2種の異なるリズム感覚〜」
【黒人リズム感を学べる本】
【グルーヴについて学べるDVD】